4/27 市中検査について倉持仁医師のツイートを末尾に追記. 8/3 タイトル変更(理由は末尾)。10/16追記:この記事への今日までのアクセスは、残念ながらまだ510に過ぎません。2023/1/13追記:抗原検査優先の謎を解く鍵は利権?
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コロナ感染拡大の初期、「PCR検査はしない方がいい」、果ては「発明者がウイルス検査に使ってはいけないと言っている」などというトンデモ言説がはびこり、これへの対策に手を煩わされた方も多いでしょう。さすがに今ではなりを潜めましたが、今度は「抗原定量検査はPCR検査と同等」というデマと戦わざるを得ない状況です。「抗原検査」の感度の低さ、つまり陽性者を見逃してしまうことが、特に空港検疫で重大問題になっていて、一時はメディアも追及しましたが(毎日新聞、東京新聞)、残念ながら最近はほとんと見かけません。これまた、日本独特の非科学の風潮と戦うことにならざるを得ない状態です。国立遺伝学研究所の川上浩一教授がツイッターで奮闘しておられます(例えばこちらのスレッド)。
ただ、この問題を理解するのは、決して難しくはないものの、あちこち検索して調べるなど、慣れない人には特に面倒です。簡単で分かりやすい説明をあまり見かけません。そこで、自分で調べた結果を、一般の人にも「5分で伝えられる」ことを目指して(?)、記事を書いてみます。(なぜ物理の人間が違う領域の面倒まで見なければならないのでしょうか?)
PCRと抗原定量検査の感度の比についての基本的な文書は、「大本営」感染研のサイトにあります。
「SARS-CoV-2検出検査のRT-qPCR法と抗原定量法の比較」
(IASR Vol. 42 p126-128: 2021年6月号)
この中の「図1」と「図2」を理解すれば、PCR検査の感度は抗原定量検査の1,000倍以上ということが分かります。以下に説明します。
「図1」は、陽性者の検体について、抗原検査で測定された濃度(Agはantigen=抗原の意味)とPCR検査のCt値(検出に至るまでの増幅回数)の相関をプロットしたものです(クリックで拡大 - 縦軸と横軸の意味を赤で追記しました.図2も同じ.5月8日)。ただし、抗原検査で陽性判定される最低レベル(薄緑の帯の上の端)に対応するPCR検査のCt値が見やすいように、引用者が縦の補助線を加えました。これによると、PCRでCt値が30強以下(つまりウイルス量が多い)の場合を抗原検査では陽性と判定することが分かります。
一方pcrではCt値40以上でも陽性判定しているので(このデータは全て陽性検体)、30と40の差は10、つまり増幅10回分、一回の増幅で2倍なので、倍率にして2の10乗分の1=1,024分の1のウイルス量でも検出できるということになります。つまり感度は約1000倍ということです。
「図2」の方は、この感度差によって、抗原検査ではどのくらい陽性者を見逃すかを示したものです。これにより、抗原検査で陰性と判定された、図のそれぞれ左下のオレンジ色の丸で示される検体が、実は陽性だった、ということを示しています。国立遺伝学研究所・川上教授の図の丸印です。
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1515306066086891521
より具体的・実際的な説明が「たなか循環器内科クリニック」というサイトにありますので、ぜひ見てください。
https://www.tanaka-heart.jp/news/20220307/
このページの最後の図を見ると(右に転載)、抗原検査では、pcrで発見できたはずの陽性者を半分近く見逃すことが分かります。感染力の強いオミクロンでは少ないウイルスで感染するので、なおさら見逃しが増える、ということになるでしょう。
空港検疫が日本だけ抗原検査が主となっていて、これがザル検疫である所以です。オミクロンも易々と入れてしまったわけです。野党もpcr検査に変えるよう要求しているようですが、いまだに変わらないようです。こんなことにまで「世論の圧力」が必要とは、何たることでしょうか。政府の専門家パネルは総辞職すべし。
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PCR検査の原理やCt値については、Human Investorという会社のページに詳しく解りやすい説明があります。
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4/27追記 倉持仁医師のツイート. 病院の検査も抗原検査「偏重」
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8/3 当初の次のタイトルは、検索エンジンが誤解しそうなので、変えました。
「抗原定量検査はPCR検査と同等」というデマを封じ込めないとザル検疫は止まらない
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