東京電力が海洋に放出/投棄したALPS通過後の水を、メディアはもっぱら「処理水」と呼んで、あたかも汚染物が含まれていないかのような、それこそ「印象操作」を続けています。また、SNS界隈でも、汚染水という言葉を使うことは風評被害を広げ、漁民らを一層苦しめるから、やめるべき、と言う議論も見られます。困っている人も多いのではないでしょうか。
しかし「風評被害」につながるから言葉を誤魔化す、と言うのはとんでもないことです。トリチウムだけでなく、他の核種もありますし。「汚染水」に対する言葉狩りは、政府とメディア一体の事態隠蔽に加担すること、そのものです。
IAEAも、放射性物質の処理の原則の一つである「正当化」については、自分は責任を持たないとはっきり言っているので、これを葵の御紋のようには使えません。(次のブログ記事参照)
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2023-07-24
自然界の濃度より明白に高いものは「汚染物」と呼ぶのが普通でしょう。トリチウムの場合は通常の海水では20Bq/L(ベクレル/リットル)ですが(例えばこの環境省のページ)、アルプスを通ったものは15万Bq/Lと2,000倍以上あります(そもそもトリチウムは処理できない)。次のIAEAレポートの20ページの表をご覧ください。
First Interlaboratory Comparison on the Determination of Radionuclides in ALPS Treated Water
他の核種は、そもそも天然にはないものが多くあるので(正確に言えば人類による核開発以前はなかった)、当然、自然界より高い、と言うことになります。アルプスでも完全には取り除けません。
薄めたら汚染物でない、と言うなら、世の中に汚染物などないことになります。
原子炉から出る代表的な有害核種セシウム137については、その「平常値」としては、太平洋でのデータがこちらにあります。
https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-4-431-55537-7_2
福島原発事故直後から1年間ほど測ったものです。そういう意味では「人工放射能」ですが。
この中のFig. 2.4によれば、数Bq/m3 程度です。
対して、アルプス処理水ではIAEAデータでは 0.471Bq/L、毎立方メートルにするため1,000倍すれば、471Bq/m3となり、「自然界」の値の1,000倍程度となります。
最後に、「風評被害」との関連で言えば、上のことが「汚染魚」にいまつながるものではない、と言うことです。これは、9月14日に共産党の小池氏が記者会見で述べたことが全く適切だと思います。
「汚染水」と「汚染魚」違う
小池書記局長 科学的根拠問う
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26日深夜追記:青色文字の部分を追記しました。
この記事へのコメント
宗純
ALPSで処理したのも事実。ですからどちらか一方が正しい話ではなくて、両方が間違ってはいないので、本来なら意味不明。
ところが何故が、汚染水だ処理水だと大騒ぎしているが、一番の問題点とは、12年以上たった今も大量の冷却水をメルトダウン発生で溶け落ちた原子炉圧力容器に抽入して地下深くで激しく発熱しているらしい1000トンの核燃料デブリを冷やし続けている事。放射能が強すぎて近ずく事が不可能で、状態が何も分かっていないこと。
yamamoto
宗純
ですから毎日毎日汚染水タンク内に溜まり続けている水量を「冷却水の量だ」と勘違いしていたが、東電はALPSで処理して、冷却水として再利用していると書いているのですから、それなら汚染水量の何倍かが冷却水の量になります。福島第一原発が営業運転していた当時とほぼ同じ量の冷却水を注入していることになりますが、これは大人の常識として「発熱している」と東電が判断していることになる。発熱がなければ冷却しない。東電の最新の発表でも強い中性子観測を言い出した。ただし、放射能が強すぎて誰も近寄れないので真実は不明。全ては推測の範囲